ジオラマ帽子「パーティー」・1

先日のマルシェ・ド・シャポー 第28回東京展の競作テーマは「パーティー」でした。いろんなイメージが出てまいります。実際にパーティーで被る帽子にしようか?せっかくだからもっと遊びのある帽子にしよう、となればジオラマ帽子。
10数年前のことです。カリフォルニアのアメリカ人ファミリーの息子が結婚するというので招待状が届いたノムラ家。まだ存命していた父も一緒に家族(+3歳だった甥)で出席しました。教会での挙式の後はガーデンパーティー、その光景を思い出して「パーティー」のジオラマ帽子は「ガーデンパーティーのイメージで作ることにしました。

思い出のガーデンパーティーは結婚式でしたのでベースは白。シゾール素材の夏帽体をまずは型入れします。外が寒いのでお風呂場での作業。
同時に小物の準備も始めます。
ジオラマ帽子の楽しみは様々な小物。「パーティー」を彩るための多種多様な小物を取り寄せましたが、その中のケーキのトレーの塗装が綺麗でない。シルバーのスプレーでお召しかえしました。
この段階で風呂場はおおよそ帽子を作っているとは思えない有機溶剤の危険な匂いで充満中。
もちろん息子達がお風呂に入るまでに換気して、私は涼しい顔して何事もなかったかのようにしています。

シゾールの帽体は2枚用意しました。というのも頭がかなりボリュームが出そうなので、薄く軽いブリム(つば)1枚だと貧弱な感じがしたからです。
2枚重ねることでドレスのパニエのイメージに沿わせ、またフラットでなくシワをつけたのもドレスが風で動く感じ、ブリム全体で帽子に動きを持たせました。そしてこのシワは小物をつける時のひっかかりになるという現実的な利点も。
最終的なイメージを実現させるために、どのような仕掛けをしたら不自然さなくイメージに近づくことができるか。そんなことを考えながらの作業です。

小物も続々と揃い始めました。
清少納言は「枕草子」の中で「なにもなにも 小さきものは みなうつくし」と書いていますが、確かに小さいと、それだけでか弱く守ってあげたい愛らしさオーラを放出している感じがします。
精巧なドールハウスと違って私が作るのは「帽子」、ですからデフォルメしたり簡略したり実際の位置関係ではあり得ない配置にしたり。被るという機能をもたせつつ四方八方から見られることも考えて作らなければなりません。
被るということで意外と丈夫に作る必要もあります。
大人の美術工芸品を目指した繊細なミニチュアの世界とはかなり趣を異にしますが、切り取ったワンシーンを頭の上に展開して移動も可能。

「ジオラマ帽子」で検索しても他にないところをみると、こんなバカバカしいことをしているのは私だけなのかもしれません。それでも帽子の面白さのひとつとして見た方に楽しい驚きを与えられれば、帽子作家冥利に尽きるというものでしょう。

(この記事は3月5日にアップしました)

野村あずさ

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