オーダーから始まったマカロンクロシェ・1

今回の静岡の大事な仕事のひとつに「オーダーの帽子のお渡し」がありました。オーダーいただいたのは4月の出店時、半年がかりの気の長いお話です。
4月の静岡にてトップハット風をお買い上げ下さったMさま。この形がとても気に入って下さって「同じ形をモーヴ系のカラーで」とのオーダーを下さいました。ただ色の感覚は人によってかなり違います。Mさまのイメージを正確に把握するために色見本的なものはないかと店内を歩いていて見つけたのがアイシャドウ。化粧品売場の前で化粧品を買うわけでもないのに二人であれこれ色を吟味し、彼女のイメージにの色を共有しました。
さて、そこからです。色は指定でしたが生地などは全くのお任せ。共有した色のイメージにぴったりの色の生地が見つかるかといえばそれがなかなか難しい。しばらく考えていて「はっ!」と気が付きました。染めたらいい!
考えを巡らせてトップはシルクの紬に決めました。それを染めるにあたって更に思いついたことが…せっかくだからグラデーションにしたら面白いだろう。早速Mさまに連絡して進捗状況と、染めたいこと、イメージが異なると困るので各工程で写真をお送りして確認しながら制作を進めたいということをお伝えしました。
そしてMさまからのお返事は「全てお任せ、確認等は必要ありません」

お任せほど自由なようで気を遣うものはありません。彼女と色を探した時に交わした会話の一部始終を思い出し、彼女の風貌を思い出し、彼女が被った時の姿をイメージし、そして生地を染めました。トップの紬はあまり苦労なく染められました。が、困ったのはブリム(つば)部分。同じ紬でブリムを作ると帽子全体がなんとなく薄っぺらい感じがしてしまい、もう少し目の詰まったシルクを選びました。ところがこの生地がベージュの色味が強いものですから、それもトップに合わせて染めることに。もともと茶系の色なので、ボルドーとブルーの染料の配合を変えながらトップの生地に一番合う色味を探しました。色が決まれば後は本番です。

浸染はムラにならないように非常に気を遣います。帽子ひとつ分ですから用尺が大きいものに比べればまだ楽ではありますが、それでも丁寧に濃さを確認しながら染め上げました。トップとブリムの生地を眺めて、自身で納得。これから裁断縫製に入ります。

野村あずさ

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