続・舞台の帽子(シゾールのこと)
貴婦人をイメージした帽子なのでつばはとにかく広く、そしてそれを被って踊るのでなるべく軽く。となるとやはり天然素材、扱いやすいシゾールを選びました。
夏の天然素材、シゾール。これはフィリピン原産マニラ麻の葉を裂いて作られる繊維です。厳密には麻ではなくバナナの仲間で芭蕉の一種目。シナマイも同じマニラ麻を原料としてますが、編み方・加工法などの違いにより呼び名が変わるようです。
とにかく麻という分類の幅が広いのは日本の特徴で、昔から「植物に含まれている繊維の総称」として呼んでいたようです。
ざっと並べても…
『靭皮繊維』茎の形成層の外方にある繊維、葉脈繊維より柔らかい
亜麻(あま) =Linenリネン 亜麻科
苧麻(ちょま)=Ramieラミー、からむし 葦麻科(いらくさか)
黄麻(こうま)=Juteジュート、田麻科(しなのきか)
洋麻(ようま)=Kenafケナフ、綿葵科(あおいか)
大麻(たいま)=Hempヘンプ、桑科
『葉脈繊維』
マニラ麻 =Abacaアバカ、芭蕉科
サイザル麻 =Sisalサイザル、石蒜科(せきさんか)
話が逸れましたが、シゾールの特徴は非常に軽いこと・風通しが良いこと・真っ白に漂白出来るので染色が用意で綺麗に発色すること・目が細かく短繊維が出ない・これにより網目や光沢が非常に綺麗に見えて高級感が出ること。最近は高級帽子に使われることも多い素材になってきました。
またマニラ麻原産地はフィリピンですが、シゾールへと加工するのは中国。その中国市場の加工賃高騰により価格が上昇しており今後はこの帽体自体も高級品になるかもしれません。
白いシゾールを木型に入れて、ギリギリまで有効に使って端は切り落とします。そして次は端の始末になります。