犬と猫の帽子(猫の耳)

犬と猫のゴブラン織の生地を見つけました。
このところ軽くて柔らかい帽子が好まれる傾向があるので(※主に年配の女性)、生地が厚くてしっかりしているこの生地はそれを考えると仕入れ却下。のはずなのに、でもな、好まれなくてもこの生地で帽子を作りたい。
生地を見た瞬間に完成イメージが浮かんだので、世の中でいう「衝動買い」をしてしまいました。

伸びのない生地ですから形がしっかりしている形が違和感がないでしょう。帽子自体は非常にベーシックな形で犬と猫の帽子ができました。

話はここからです。
ゴブラン生地の模様の関係で猫の帽子はトップに模様が入らず、犬の帽子と並べると少々間が抜けた感じに見えます。
しばらく眺めていて、やはりあまりに頭が寂しい。仕事場で端切れを見ていたらはたと思いついて「耳」を付けることにしました。
その時点で既にギャラリーでの展示会は始まっておりました。完成品として展示していましたが、そこはギャラリーの自由さ。
会期中に帽子が進化していくのも面白いでしょう。帽子を見ながら耳をどうしようかとたっぷり時間をかけて悩んでおりました。

あるお客さまが犬と猫の帽子を面白がって下さいました。私が耳のパーツを出して「ここに付けようかと」と帽子上部に仮置きしたら「あら、面白い。うーん、でもそれよりこちらのほうが」と猫の頭を指し示しました。自身では思いもしなかった場所にびっくり。
「頭の上だと子どもっぽいけど、こちらだと大人っぽいわ、素敵よ」とお客さまは自信満々。
この「耳」の位置に関しては「そうか!」と私も納得。その場所に丁寧に耳を縫い付けて猫帽子が完成しました。

アドバイスいただいたお客さまはおしゃべりだけでお帰りになりましたが、後日、猫帽子は一目惚れした別のお客さまがお求め下さいました。耳がいい!と喜んで下さいました。
生地を見つけたときからインスピレーションのリレーをしたような、そんな帽子のエピソードです。

野村あずさ

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