オーダーの花の帽子

3月に出展した松坂屋ゴールド会。その会期前にあるお客さまから連絡がありました。松坂屋からゴールド会の案内が届き私の帽子を知った、是非伺って帽子を拝見したいと。そしてそのお客さまであるYさまは初日の午前中にご来場下さいました。
帽子をご覧になり、お持ちの服に合わせたいと帽子のオーダーを2つ。私の帽子に興味を持って下さっただけでも有難いのにオーダーを2つも!
制作途中にYさまに確認しながら仕上げたのがこの帽子です。このような華やかな帽子を被る方がいらっしゃることを嬉しく思うと同時に、その帽子を作る機会をいただけたことを光栄に思いました。

アイボリーのワンピースに合わせたいとのコンビの帽子。シゾール素材のトップ部分は石目、つば(ブリム)部分は網代編みを使いました。編みの風合いを変えると印象の幅も広がるだろうと思ってのことです。合わせる服によって少しカジュアルにも、エレガントにもお使いいただけるでしょう。広めのつばに大きめの黒い花はお客さまのリクエスト、黒いグログランリボンが全体を引き締めます。

ゴールド会会場にいくつか持ち込んでいた帽体。Yさまは薄紫の帽体に目を留めて「ラベンダーのワンピースにぴったりだわ」と、その帽子もお作りすることになりました。こちらは優しい雰囲気になるように小さめの花を集めて華やかさを出しました。花の間からチラリとリボンを見せたのは幼い感じのリボン使いにならないように、そして花飾りが唐突にならないようにの配慮です。

オーダーはお渡しするまで気が気ではありません。お客さまのイメージに合わなかったらどうしよう。嬉しいことにYさまからはとても気に入った旨のご連絡があり、胸を撫で下ろしました。
カジュアルが主流の昨今。華やかな帽子は素敵だけど「被って行く場所がない、合わせる服がない」と「見るだけ」の鑑賞品になってしまいがち。勢い「商品」としての帽子は普段使いの気軽なものが多いような気がします。以前、帽子メーカーの社長さんとお話することがあり「上質上等の帽子を作る機会がない、機会が減れば作る人も技術もどんどんなくなっていく」との危機感を共有したこともあります。そのような中でこの帽子を作る機会をいただけたことは帽子屋冥利に尽きるといえるでしょう。
反面、自分の力がまだまだだと反省も致します。
私達はお客さまに育てられている。本当にそう思います。そうであるならお客さまが私達の成長を喜んでいただけるような、そんな作り手にならなければとも改めて心した次第です。

これはYさまの了解を得て記事にしました。Yさま、どうもありがとうございました。

野村あずさ

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