オーダーから始まったマカロンクロシェ・2

裁断をするとグラデーションの出方がよりクリアになり、このあたりでようやく自身の頭の中のイメージと実際が少しずつ歩み寄ってきました。型紙で裁断縫製する帽子は、乱暴に言ってしまえば正確に手順を踏めばいずれは出来上がります。生地を染めるまであれこれ考えていた時間と実際に染める作業に比べればここからはあっという間。
裁断で出た端切はオーダー下さったMさまに差し上げることにしました。アーティストの知人も多い彼女ですから、この端切で帽子と揃いのアクセサリーを作ることも出来るでしょう。

出来上がったオーダーマカロンクロシェは「私にとっては」非常に満足いくものになりました。トップからサイドにかけての微妙なグラデーションは、やはり染めて良かったと胸を撫で下ろしました。トップハット風のフォルム、頭部分(クラウン)の面積が大きい帽子です。いまここに単色の生地で作った同じ帽子が並んだら、そちらはおそらく単調に見えたに違いない。結果論ではありますが。
後はこの色合いがMさまのイメージにぴったりかどうか、お渡しするまで気が気でない時間を過ごしました。

松坂屋静岡店の初日。Mさまがいらっしゃいました。恐る恐る帽子を差し出すと「あ、素敵!」と。良かった!
Mさま、頭に乗せると迷うことなく前回のようにアレンジが始まりました。こちらは販売を手伝ってくれているマネキンさんと一緒に「おおお」と感嘆しきり。
鏡を見ながらではありますが、しかし後ろは合わせ鏡などで見ることもなく手加減でどんどん形を変えていきます。自分の帽子が変化していく姿を目の当たりにする不思議。この段階でもう帽子は私のところから巣立っていきMさまの忠実なパートナーとなった、そんな気持ちが致しました。

Mさまは端切すら手懐けてしまいます。マカロンクロシェのつば(ブリム部分)をあれこれいじって、そこに端切を差し込んだらこんなことになってしまいました。参った!
これほどまでの彼女ですから、私はてっきりファッションもしくは美大でデザインなどの勉強をされていたのかとおもっておりましたが全くその関係ではありませんでした。
ご自身曰く「自分が素敵に見えるようあれこれ探った結果」だとか。

自分には似合わないと、帽子を眺めて去る方も多くいらっしゃいます。しかし彼女ように「自分が素敵に見えるように」と(たぶん)あれこれ探った結果、これほどまでのスタイルを作り上げることが出来るならチャレンジするだけのことはあるかと思うのです。
良いお仕事をさせていただきました。これが私にとっての新しいステップになりますように。

野村あずさ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

コメントする