「イージーエレガンス」の提案
私の帽子のテーマは「イージーエレガンス」です。
3年ほど前に軌道修正して今のようなラインナップになりました。なぜ私が「イージーエレガンス」提案するのか? というと、それは「大人の女性が上品で綺麗に見えるから」そこに尽きます。
いまのファッションの主流は「カジュアル、シンプル、ベーシック」、しかし 「カジュアル、シンプル、ベーシック」だけで(気楽に、ではなく)綺麗に、上品に見せるのは少々難しい。 なぜなら童顔で子供っぽい体型の日本人がカジュアルそのままではお洒落感が足りないから。それは日々ファッションに向かい合うスタイリストの方が提言していることです(特に日本の場合「アメカジ」の影響が強く、Tシャツにデニムそのままを着こなすにはもう少しメリハリのある容姿の方が映える、という明快な理由)。
とにかく私が世間で言えば立派な中年成人の年齢。「若さ」でカバー出来ないので「カジュアル」だけでは生活感が滲み出た部屋着です。それは日々感じます。
ですから「カジュアル」に「プラスα」して整えたらどうでしょうか? という問題提起です。
そのプラスαが難しい。「カワイイ」はワクワクして楽しい、「ナチュラル」なスタイルも自然体で素敵。しかし現実は厳しく、この私が「カワイイ」に傾倒するとうっかりすると「子供っぽいオバサン」になってしまう。「ナチュラル」に偏り過ぎると、今度は「地味なオバサン」になりそうで。
ということで私の帽子は、大人の女性へのプラスαの提案に「エレガンス(またはドレスライク)」を掲げました。
カジュアルにエレガンスを加えれば 日本人の大人の女性が気張らず自然体で綺麗に見えるから、そう思ってのことです。
女性は年代によってライフスタイル、体型、価値観が変わっていきます。 ところが帽子に関しては「カワイイ」を卒業したその先、「ナチュラル」からシフトしていくその先の提案がなぜ少ないのか? というのが素朴な疑問にありました。
「大人カワイイ」という言葉がファッション用語のみならず一種のトレンドワードになってずいぶん経ちます。そもそも雑誌のコンセプトで登場した「大人カワイイ」は30代をターゲットにしたキーワードでした。
それが今ではかなりの年齢の幅で使われています。「カワイイ」という言葉が私達日本人の生活や価値観にどれほど浸透しているかが伺い知れます。私だってカワイイものは大好きです。
ただ帽子を提案する側として、幅広い年代に同じカテゴリの帽子、同じリボン・レース・花飾りの帽子を紹介することに対する疑問は常々持っておりました。帽子売場に並ぶ大半は「カジュアル、シンプル、ベーシック」そして「カワイイ」「ナチュラル」。
加えてそこに年相応の大人らしい美しさがあっても良かろう。ファッションは多様性・独自性があるから魅力的、みんな同じでは制服になってしまいます。
特に「カワイイ」は日本人の多くに共感される顕在的な価値です。しかしお洒落を楽しむ潜在的な価値にまで高まるのかどうか。
難しい言い方ですね、わかり易く言い換えましょう。
「カワイイものが好き」という具体的な意識、これが顕在的ニーズです。イメージがハッキリしているので提供する側も「カワイイもの」を特定して提案しやすい。ところが実はよくよく話を伺えば「カワイイもの」ではなく「他のもの」があればよりよいかたちで問題解決ができそうだ、そういう本人が気が付かなかった他者から引き出されたものが潜在ニーズです。
あるお客さまが帽子を探していらっしゃる。目的は様々とはいえ、お客さまは「似合う帽子」をお探しになります。ここで大切なのは「似合う」はそのお客さまが今より(ちょっぴりでも)「素敵に、綺麗になる」こと。こちらが「あなたにぴったり」と勧めてもお客さま自身が現状と代り映えしないと思った段階でその提案はほぼ却下されるでしょう。ご自身に「今より素敵に、綺麗になる」と納得していただかなければ意味がない。
お客さまが「私はカワイくなりたいの!」と熱望されていれば別ですが、「今よりちょっと素敵になりたい」のであれば 「カワイイ」ではない「ちょっぴりエレガンス」な提案も充分問題解決になり得るということです。
もう一度繰り返します。
帽子を提案する側として、あらゆる年代に同じカテゴリーの帽子を提案することに対する疑問は常々持っておりました。「カワイイ」は共感そしてコミュニケーションツールとしてはとても便利な言葉ですが、大人に対しての褒め言葉として相応しいのか? いつまでも「カワイイ」のが最上の価値なのでしょうか、年相応の大人らしい美しさで何が悪いのかしら?
帽子をお探しになる多くのお客さまは「カジュアル、シンプル、ベーシック」だろうことは私も承知しています。少ない数ではあるでしょうが、私の帽子の価値観に共鳴して喜んで下さるお客さまとしっかり繋がっていきたいと思っております。
注・この図は私自身の仕事上の確認用なので、他のみなさんのファッションカテゴリの認識とは少しズレがあるかもしれません。それはご了承下さい。