お客さまが求める夏の帽子の3大機能

夏の帽子をお探しになるお客さまで「機能性」を気にされる方は少なくありません。ずらり並ぶ帽子を前に「機能性重視」のお客さまからはじっくり見るのよりも前にすぐさま「洗えるか?」「畳めるか?」「UV加工してあるか?」の質問3点セット。これがお客さまが求める夏の帽子3大機能…つまりは汚れたらいつも洗ってさっぱりしたい、帽子を外したとき邪魔になるので畳んで小さくしてバッグに入れたい、紫外線が気になる、というご要望です。
お気持ちはわかります、私も使う立場におりますので。
そして提案差し上げる立場として、これらの声がたくさんあればあるほど困ってしまうのも本心。
ざっと検索するとあれこれ出てきます。「帽子の洗い方」「帽子を洗ってみた」中には「帽子洗濯 型崩れ」のSOS発信。かなりのチャレンジャーまでいらっしゃるようですね。

日本橋某百貨店の帽子売場で長年 目の肥えたお客さまをお相手されていた販売員の方が、私とこの話題になったときに教えて下さいました。
「そういうお客さまにはこうお伝えするんですよ、『お客さま、上等な帽子ほど洗えないんですよ』ってね」
なんと説得力のあるフレーズ!確かにそれは一理あります。

ところで。
「靴」を選ぶときは何を基準にお選びになるのでしょう。(コンフォートシューズや介護用の靴はまた別として)「機能性重視」で真っ先に「洗えますか?」「収納性が良いですか?」…とおっしゃる方はいるのかしら。
靴に洗えるものと洗えないものがあるように、帽子にも洗えるものと洗えないものがあります。子供の上履きはジャブジャブ洗いますが、革靴はそこまで大胆なお手入れは致しません。
日本の夏向けの機能重視の履物ならビーチサンダルか草履下駄あたりが最適かもと思いますが、しかし靴に限らず衣類や身の回りのものが「機能」だけで成立しているわけではないことは、ざっと見渡しても一目瞭然。
そういえばこの春夏シーズン中に某百貨店で「洗える帽子が云々」と話してきたご婦人、こちら既に何人ものお客さまとその話をしていたので「あぁ、きたきた」と。いくつか言葉を交わして「お客さま、靴も洗えるものと洗えないものがございますし」と言った途端、「あら、足は汗をかかないわよ」
新説珍説!!!

写真はワッシャーリネンのクロシェ。立体的な生地の表情、シワ汚れが目立たない等の利点があるのでご旅行にも便利とこの春夏シーズン 地味に売れた帽子です。しっかりした生地なのでこれからの盛夏には少々暑いかもしれません。その場合は少しお休みいただいて、残暑から秋に再び活躍させて下さい。
万が一この帽子を洗ってしまった場合、洗濯収縮が少ない生地ですししっかり縫製してあるのでひどく型崩れはしないはずです(未確認)。ただ帽子は型が命。くたくたヘナヘナの帽子も気軽に被るには良い「かも」しれませんが、やはり帽子は顔まわりのもの。顔を引き立てるためにもあまりしわくちゃなものは綺麗に整えた方がよろしいかと思います。

そして私達が帽子の洗濯をあまりお勧めしないのはここ。仮に型が崩れた場合、帽子屋は木型などで型を整えてアイロンをかけることが出来ます。しかし一般家庭に木型などあるとは思えません。「質感や風合いを損ねる」他に「型崩れした場合の復活方法が難しい」ということもあるのです。

野村あずさ

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