ハットピンの愉しみ

帽子の飾り(トリミング)は多種多様な材料を使い作り手のセンスで仕上げます。その材料も作家によって好みや得意なものが分かれます。同じリボン使いでも作り手によって使い方や仕上がりが異なりガラリと印象が変わるので、トリミングは難しく、でも非常に面白い。言うなれば「最後の一手」。
最近改めてその魅力に気が付き、使うようになってきた素材のひとつがハットピン(帽子用ブローチ)。帽子の飾りでは非常に古くからあるグッズです。そもそもは被った帽子が風で飛ばないように、もしくはファッション性が高く安定が悪い帽子を被るとき…そんな場合に先のとがった本当のピンで 結い上げた帽子と髪の毛を一緒に留め付けた、ずれ防止も兼ねた実用的なアクセサリーでした。使う場所や帽子や髪型のスタイルにより、短いものから長いものまで様々なハットピンを使い分けていたようです。なんと優雅な習慣なんでしょう。今では髪まで一緒に留めるということもなく、帽子に差して楽しむアクセサリーになりました。

スーツの襟につけるラペルピンと同じ形状ですが、ピンが長めのハットピンはラペル(スーツの下襟部分)に挿すと少々金具部分が見えすぎるかもしれません。
長いピンにはそれなりの理由があったのですね。

さてそのハットピン、そのまま差すのもスッキリして良いのですが少しのプラスαをするとぐっと雰囲気がアップします。革紐とシンプルなデザインのハットピンでクールに、麻素材のブレードに天然貝のハットピンでナチュラルに。上手にハットピンが使えれば帽子の見せ方も更に豊かになるでしょう。ご存知でない方も最近は多いハットピン。小さく華奢なその姿から かつて帽子のお洒落を楽しんでいた良き時代を想起させられる、そんな気が致します。

野村あずさ

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