AZU通信63号「帽子を作ろう 最終回」

前回「AZU通信62号」の続き。「洗える」「畳める」ペーパー素材の帽子の登場に、さすがメーカーさん!素材開発は個人作家では及ばない…と思っていたら衝撃の事実。街に氾濫している「洗えるペーパー帽子」を細かに調べていきますと、こういう仕掛けだったのです。

A社「ポリブレードハット」素材…ポリエステル 90%/綿 10%
ペーパーブレードではなくポリブレードまで登場しております。確かに手入れは簡単でしょう。そしてポリスエステルは繊維としてはUVカット率90%以上(反射するのではなく吸収することでカットします)。しかし吸湿性通気性は繊維としてはほぼゼロ。ですので、蒸れて髪がぺしゃんこになってもガンガン洗える方がいいのであれば、こういう帽子が良いのかもしれません。
ちなみに速乾性のシャツなどはやはりポリエステルが使われていますが、これは繊維自体ではなく織り方で生地全体で汗を逃す仕組み。繊維と繊維のすき間を大きくしてその間を水蒸気が通り抜けることにより、透湿性を高めたものです。水分を吸わないので「吸水性」ではない、お間違えなく。合成繊維でつくられた夏服は光にかざすと透けるくらいに薄く作られるものも多く、それは透湿性を高め水分を蒸発させるための工夫です。

B社「ウォッシャブル軽量ポリペーパーキャペリン」素材…ポリエステル 100%
C社「洗えるポリペーパーハット」素材…ポリエステル 80%/ポリプロピレン 20%
D社「エアリー洗える麦わらハット」素材…ポリエステル 60%/ポリプロピレン 40%
素材にパーパーも麦わらも入っていませんが?

E社「洗えるペーパーブレードハット」素材…指定外繊維(紙)80%/ポリエステル20%
「洗えるペーパーハット」がうたい文句のものはポリエステルを混ぜているのが多いようです。納得。

F社「UV対策 洗える麦わら帽」素材…指定外繊維(ペーパー)74%、ポリエステル17%、ポリプロピレン9%
ですから素材に麦わらは入ってませんて。

原稿中には「フリーサイズ」について少し触れています。消費者が便利だと思うもの、都合がいいものを提案して買ってもらおうとするのは商売するにおいて当然のことです。ただファッションである以上、機能と同時に美しさも提案して欲しい。フリーサイズで幅広い体型の方が着ることができても、フィットしていない服で年齢を重ねたご婦人の身体が綺麗に見えるでしょうか?洗えることには間違いなくても仕上げが伴わず、ヨレヨレクタクタになった帽子を(若いお嬢さんならともかく)ご婦人が被っていて綺麗に見えるでしょうか?

野村あずさ

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