帽体の下処理

連休が明けると帽子売場は夏まっしぐら。季節感溢れる帽子が並んでいるのを見ると、夏もすぐそこまで!と気分も盛り上がります。多数を占めるのはペーパーブレード(ペーパーと呼ばれる再生繊維の細いテープをぐるぐる縫ったもの)、ナチュラル感があり素材開発で洗えるものも出てきて畳める(丸められる)のがウリ。そしてもうひとつは椰子の植物の葉を加工して作られた素材・ラフィアを編んだ帽子。繊維自体が樹脂を含むため光沢があり軽くて丈夫、そして型崩れを気にせずこちらも畳める(丸められる)。この2つの素材が双璧となって帽子売場を席巻しております。

そんな夏物合戦の最中に帽体の仕入れに行きました。時代に逆行するようですが私が仕入れたのは帽物帽体の中でも軽くて色艶が良い天然素材のシゾール。洗えないし畳めないしUVカット加工もしていません。ご婦人がご希望されるあらゆる機能はないものの、帽子の造形の魅力を存分に発揮出来る素材です。何枚か仕入れて さて制作。木型に入れる前に下処理をしました。師匠から教わったこの方法、一斗缶に入っている帽子用の「糊」と呼ばれる液体に帽体をどぶん!と漬け込みます。全体に軽く糊付けして乾かし、そこから通常の型入れをすると手際良く仕事が進み型崩れしにくい帽子になる「ような」気がするのですが。

私の帽体は比較的しっかりと糊が入っています。そこは好みなので、柔らかくしなやかに軽い糊入れで仕上げる作家もちろんいらっしゃいます。素材は確かにデリケート、それでも被る時にあまりビクビクドキドキしないような丈夫さがあった方が使い易いかしらと考えての、今のところの結論です。

「お洒落過ぎる」「被って行く場所がない」と敬遠される方が少なくない帽体。安いものでもないし売りやすい商品でもない。けれど私は最大公約数的・機能的な帽子を作りたいからこの仕事をしているわけではありません。
繰り返しますが、帽子は立体造形。被ってはもちろん、置いた姿も美しい帽子を作りたい。そんな想いをずっと持ち続けてまいります。

2018年5月30日(水)〜6月5日(火)
「帽子3人展」
髙島屋日本橋本店1階  イベントスペース
服部スヴェトラーナ、安田由子との3人展
「大人の女性のための上質なエレガンス」を提案致します

野村あずさ

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