魅力的な後ろ姿

2016-09-17-00-22-09「人には正面と背面(後ろ姿)がある」ということを発見しました。
今さら何をいっているのだ?とお思いになるでしょうね、確かに。でも改めて考えると正面があるということが、どれほど私達の装いに影響を与えているかがよくわかります。

友人のジュエリーデザイナーが出展した銀座某百貨店のジュエリーフォーラムというイベントのお手伝いをしました。
ジュエリーがずらり並び、販売員はもちろん担当ブランドのネックレスやピアスをつけ、これ目当てのお客さまももちろんジュエリー好きですからシンプルだったりゴージャスだったりの違いはあれど、思い思いのジュエリーを身に着けてご来場下さいます。皆が皆 首から首飾りを、耳から耳飾りをぶら下げている光景は、ふと異なる視点が入ってくると非常に不思議な習慣のように思えて仕方ありません。
「飾る」というとても原始的な思考を変えずその行為をを何千年(何万年?)も変わらずし続けているなんて、人間のやってることって全然変わらないなぁ、と。

そんなこんなで首飾り耳飾り指飾りの集まりを見ていて「はっ!」としたのが、みなさん正面は非常に着飾っているのに比べて後ろ姿のなんと無防備なこと。
それぞれ個人の識別はほとんど顔かたちでするものだと思いますから、その顔を魅力的に見せようと化粧をしたり髪型には気を配ります。ジュエリーでさらに華やかさを加えるのも正面。
(「後ろ姿を魅力的に見せたいから、ネックレスは背中に垂らすのよ!」という方がいらっしゃいましたら是非お申し出下さい)
目が正面を向いている以上これは必然です。魅力的に見せるべきはまずは顔がある正面。人間の目が前に向いている以上、私達は自分自身の確認も鏡で映った正面になります
そしてさほど飾り付けされておらず無防備である後ろ姿で何が露になるかというと「姿勢」「立ち方、歩き方」のような気がしました。あくまで私が思ったことですが。

ということで後ろ姿を追いかけるようになると、帽子屋ですからやはり頭が気になる。誰もが服は着ていますが帽子はさほどではありません。凝ったヘアスタイルや髪飾りの方、そして帽子を被っている方の後ろ姿は特に印象深くなります。
実は、帽子催事の際には試着したお客さまには必ず手鏡を持っていただき、合わせ鏡のようにして姿見に映った自身の横や後ろ姿を見ていただいています。「帽子を被った姿は、他の方からはこういう風に見えるんですよ」と。お客さまは「なるほどね」と、かなり感心されてご自身の横や後ろ姿を見て下さいます。
帽子を決めかねている時にはこの客観的な視線が決め手になる場合も多々ありますので、ファッション(お洒落)は自分の気持ちを上げるためと同時に、他者の視線を気にするものでもあるんだなと改めて感じたり。
そう、周りは意外と四方八方から見ているものです。もちろん正面を最重視するものの横やら後ろやらから見た情報を併せもって「その人」を認識します。人間は立体なのです。

後ろ姿に個性はいらない、後ろ姿までお洒落する必用はない、という考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかしせっかくの「世界で一人だけの私」、「何処から見ても素敵」であればもっともっと自分に自信が持てるような気がします。
その魅力的な後ろ姿に「良い姿勢」は第一条件。姿勢が悪いと不必要にくたびれて見えてしまいますからね…まぁ、これは後ろ姿に限りませんが。シワは時には魅力になりますが、姿勢の悪いのは絶対に魅力になりません。
さて、何をどうするか。バックスタイルの凝った服を着るのもひとつの方法かもしれません。そして帽子に携わっている立場として、帽子を被るのも有効な手段としてご提案致します。
どうぞご自身の後ろ姿を合わせ鏡でご覧いただいて、今度は帽子を被ってもう一度見て下さい。帽子を被った後ろ姿は更に表情豊かになっているはずです。(しかも髪型がまとまっていない、髪が薄くなってきた、分け目の白髪が目立ってきた、などのお悩みも一気に解決します。このような髪のあれこれ、四方八方から見る他人からはかなりハッキリわかるものです。)

ショーの為に作る帽子は後ろ姿も大切にします。モデルがくるりと向きを変えて去っていく、その姿も魅力的であればより印象深いワンシーンになるだろうと考えるからです。
正面で印象づけて後ろ姿で余韻を残すなんて、まるで映画のよう。
写真は正面よりも後ろに薔薇をふんだんにあしらったシルクハット(生地も薔薇の模様織!)。如何でしょう。「どんな人が被っているのかしら?」と想像を掻き立てられるとお思いになりませんか?

野村あずさ

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