なぜ帽子を被らないの?「似合う、似合わない」

IMG_0114電車に乗っている時、同じ車輛内で何人帽子を被っているだろうと数えるときがあります。定員130~150人(乗車率100%=全席着席・全つり革使用・ドア両サイドに2人立っている状態)だとして数人〜夏場だともう少し増えて10〜20人ほどでしょうか。
帽子好きで帽子に携わる私としてはがっかりするほどの少ない数。ひとりひとりに「どうして帽子を被っていないのですか?」と聞きたいくらい。
でもいきなり知らない人に質問攻めにするのもされるのも公衆道徳上よろしくなさそうなので、身近な人に聞いてみました。
「だって似合わないから、似合う帽子がないのよ」
「え?似合う似合わないって誰が決めるの?」
「自分で見てそう思うんだもの、変なのよ」
「靴は?この靴、私に似合うわ〜♡って思って履いてるの?」
「靴は履かなくちゃいけないけど、帽子はなくても平気でしょう」
「紫外線は肌を痛めるのと同じように髪にも良くないんだよ、白髪の原因のひとつっていう研究結果も最近発表されたんだよ」
「でも似合わないんだもの…冬は被ると暖かいから被りたいんだけど」
「暖かいからマフラーとか手袋とかはするんだから同じように被ればいいのに」
「帽子はね、似合わないのよ」
「帽子は顔が目に入るからね、気になる?」
「そうね。自分の顔、嫌い」

確かに百貨店で接客してる際にも、同じようなことを思わざるを得ない場面があります。
帽子好きな方は試着すると自分の姿をしっかり鏡に映して、そしていろんな方向から角度から帽子を被った自身と向かい合う。その帽子がご自身にしっくりくるかどうかをご自身でじっくり判断されます。しかし慣れない方や苦手な方は、鏡を一瞬覗いただけで「ダメ!似合わないわ!」と帽子を脱いでしまう。

他に「髪が潰れる」「帽子を被るのが恥ずかしい」(←???)「嫌い」(←!!!)というような言葉も何度となくお聞きします。

逆にこんなことも。
年配のご婦人が丁寧に試着してもちろんとてもお似合いになり気に入ってお買い上げになった帽子、帰宅後にそれを見たご家族が「帽子が若過ぎる、似合わない」と。後日「ごめんなさいね…」と申し訳なさそうに返品にいらっしゃいました。

似合う、似合わない。
本人の思い込みだけの場合もあるし、身近な人に言われたからという場合もあります。ただ趣味が違うというのであればまだしも「見慣れていないだけ」ということも多いはず。帽子にとても興味がおありなのに少々のためらいをお持ちになっているお客さまには「三日被り続ければご自身も周りも見慣れますよ、すぐに帽子が日常になりますよ」とお話差し上げます。その言葉に納得して下さって帽子をお買い上げ下さる方も、それでもやはりチャレンジ出来ないままお帰りになる方も。「可能性」があったのに残念だな、とは思いますが、これはあくまで私個人の気持ちに過ぎません。どちらの方もご自身の価値観を大事にされた結果ですから、私はその気持ちを大事に致しましょう。

写真の帽子。商品というよりはディスプレイの役割に重きをおいて作った1点ですが、置いておくとかなりのお客さまが興味を示して下さいます。中には試着して下さる方も少なくありません。鏡を見て「素敵ねー」とのお声をいただくと本当に嬉しい。
先日の帽子のショウでも毎年思うことですが、女性である限りお洒落してみたい、ちょっと冒険してみたい、綺麗になりたい。そういう気持ちを持ち続けていることはとても素晴らしいことだと思います。
帽子がその気持ちをどこまで受け止められるか。それが今の課題のひとつです。

野村あずさ

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